日本の少子化問題は
今後どうなるのか
── 7つのステップで読み解く未来予測
出生数70万人割れの衝撃から、2070年の日本を構造的に分析する。
2025年、日本で生まれた子どもの数は 70万5,809人。過去最少を10年連続で更新し、国の公式推計より 17年早いペース で少子化が進行しています。合計特殊出生率は1.15(2024年確定値)と、人口置換水準(2.07)の約半分にまで低下しました。
少子化はもはや「このまま進めばいつか深刻になる問題」ではなく、「現在進行形で社会を変質させている現実」です。政府は年3.6兆円規模のこども未来戦略を推進し、2026年4月からは子ども・子育て支援金制度も本格稼働しましたが、出生数の下げ止まりには至っていません。むしろ状況は、政府や研究機関の想定を上回るスピードで悪化しています。
本レポートでは、婚活の最前線に身を置くフォリパートナー総研の視点から、厚生労働省、国立社会保障・人口問題研究所、こども家庭庁、日本総合研究所などの公的データと最新の研究分析をもとに、日本の少子化が今後どう推移するのかを7つのステップで丁寧に読み解きます。数字の背後にある構造と、これから日本社会に訪れる変化、そして私たち一人ひとりができることを、データとともにお伝えします。
- 現状把握 ─ 2025年に日本で起きた「静かな異変」
- 軌跡の検証 ─ なぜ少子化は想定の17年前倒しで進んだのか
- 構造分析 ─ 少子化を加速させる3つの根本要因
- 2030年代の急減期 ─ 若年人口がさらに半減に向かう
- 2070年の日本 ─ 総人口8,700万人・高齢化率39%の世界
- 政策の限界 ─ 年3.6兆円投入でも止まらない理由
- 核心への提言 ─ 「結婚という選択」から未来を変える
2025年に日本で起きた「静かな異変」
2026年2月26日、厚生労働省は衝撃的な数字を公表しました。2025年の出生数(外国人含む)は 70万5,809人(前年比▲2.1%)、10年連続で過去最少を更新したのです。日本で人口動態統計が取られ始めた1899年以降、最も少ない数字です。
一方で死亡数は160万5,654人。差し引きすると、日本の人口は2025年の1年だけで 約90万人 減少した計算になります。これは、政令指定都市の千葉市(約98万人)がほぼ丸ごと消える規模の減少が、1年のうちに起きているということです。
「結婚=出産」の前提が崩れ始めた
注目すべきは、婚姻数は実はむしろ増加しているにもかかわらず、出生数が減り続けているという事実です。厚生労働省が2026年2月26日に公表した人口動態統計速報によれば、2025年の婚姻数は50万5,656組(前年比+1.1%)となり、2年連続の増加で3年ぶりに50万組を超えました。それでも出生数は1万5千人以上減少しており、「結婚が増えれば出生が増える」という単純な構図が崩れていることが分かります。
この背景には、結婚から第1子誕生までの期間の長期化があります。2024年時点で、結婚から第1子出産までの平均期間は 2.8年 となり、2020年以降で最長に。さらに「夫婦が持つ子どもの数」の減少、そして 「子どものいない夫婦」の増加 が、出生数を押し下げる新たな要因として表面化しています。
また、都道府県別に見ると地域差も顕著です。東京都の合計特殊出生率は2023年に0.99と全国で初めて1.0を切り、2024年はさらに0.96まで低下(8年連続の低下、全国で唯一の1.0未満)。一方、沖縄県は1.54、宮崎県は1.46と地方ほど相対的に高い傾向にあります。しかし地方から東京へ若者が流出することで、人口規模の大きな東京の低出生率が日本全体の合計特殊出生率を押し下げる構造が続いています。つまり少子化は「どこか特定の地域の問題」ではなく、日本社会全体の構造問題 として受け止める必要があります。
注意すべきは、この数字が「コロナ禍の一時的影響」ではなく、長期的なトレンドとして定着している 点です。2020年以降、コロナ禍が落ち着いた2023年以降も出生数の減少ペースは鈍化せず、むしろ2022年から2024年にかけては年5%超の急減となりました。物価高、実質賃金の低下、社会保険料負担の上昇──生活実感の悪化が、「子どもを持つこと」を希望ではなくリスクとして捉える若者世代の空気感を生んでいます。
この数字の衝撃は、社会保障制度や地域社会の存続にとどまりません。日本の企業の労働力、消費市場、教育機関、医療機関、そして住宅市場に至るまで、あらゆる産業が「若い世代の減少」という構造変化に直面しています。毎年出生数が数%ずつ減っていくということは、20年後に新入社員となる若者、30年後に住宅購入層となる世帯、40年後に中堅労働力となる人口が、階段状に減り続けていくということです。これは日本経済の潜在成長率を押し下げ、税収を先細りさせ、財政と社会保障の持続可能性を脅かす根源的な問題なのです。
なぜ少子化は想定の17年前倒しで進んだのか
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)が2023年4月に公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、出生中位・死亡中位シナリオで出生数が66万人台に突入するのは 2041年 の想定でした。しかし現実には、2025年時点で同研究所が「低位推計」として示していた水準(66.8万人)にほぼ到達しています。
つまり、最も悲観的なシナリオすら実態を捉えきれず、少子化は公式推計を 16〜17年も前倒し で進行しているのです。これは単なる誤差ではなく、モデルそのものの前提が現実と乖離したことを意味します。
コロナ禍が崩した「令和婚」の期待
2019年の改元時、「令和婚」と呼ばれる駆け込み需要で婚姻数は一時的に増加しました。しかしこの「先食い」の反動に加え、2020年春からのコロナ禍が決定的な打撃となりました。日本総研の試算では、2020年5月から2024年12月までの間に、コロナ禍の影響で 約11.3万組 の婚姻が失われたと推計されています。
結婚が1組減れば、その夫婦から将来生まれたであろう子どもも失われます。コロナ禍による婚姻機会の喪失は、5〜10年後の出生数に今も影響を与え続けているのです。実際、2020年に婚姻した夫婦の第1子は本来2022〜2023年頃に生まれるはずでしたが、コロナ禍で結婚が先送りされた結果、そのスケジュールが2〜3年遅れで到来しており、これが2024〜2025年の出生数減少にも影響を与えているとみられます。
ただし、ここに 希望の兆し もあります。日本総研の藤波匠氏が2026年3月に発表した分析によれば、コロナ禍以降に急減した婚姻数は2024年から増加に転じ、2025年は前年比+1.1%の50万5,656組と2年連続の増加を記録しました。特に東京都では、手厚い少子化対策や共働き世帯向けの環境整備が奏功し、婚姻数・出生数ともに増加に転じています。地方部では依然減少が続いているものの、大都市での回復は少子化反転の小さな火種と言えます。
「結婚離れ」ではなく「結婚機会の喪失」
重要なのは、若者の「結婚したくない」という意思の問題ではない、という点です。社人研の「出生動向基本調査」によれば、未婚者の結婚意欲は長年にわたり8割前後で安定しています。つまり多くの若者は結婚を望んでいるものの、経済的制約、出会いの機会、労働環境など、構造的な障壁が結婚という選択を阻んでいるのです。
同調査では「結婚していない理由」として、男女ともに「適当な相手にめぐり会わない」が長年トップです。次いで男性では「結婚資金が足りない」「結婚後の生活資金が足りない」など経済的理由、女性では「自由さや気楽さを失いたくない」「必要性を感じない」といった理由が続きます。ここから読み取れるのは、「結婚の前提条件」そのものが高くなっている という現実です。かつて20代前半で就職・結婚・出産が一直線に繋がっていた時代は終わり、現代では「一定のキャリアと収入」「精神的・経済的な準備」「相手との十分な相性の見極め」が結婚の前提とされるようになりました。
この変化自体は個人の価値観の多様化であり否定されるものではありません。しかし結果として、社会全体で見れば結婚年齢が上昇し、結婚しない人が増え、結婚しても子どもを持ちにくくなっているのも事実です。個人の合理的な選択の集積が、マクロでは社会の持続可能性を損なうという「構成の誤謬」が、日本の少子化問題の本質にあります。
国の将来推計と実績の乖離は何を示すか
社人研の将来推計は、人口学的に最も精緻な手法(コーホート要因法)を用いて行われており、世界的にも高い信頼性を持つとされています。それでも実態が推計を17年も前倒しで進むという事実は、少子化の進行が予測モデルの前提そのものを揺るがしている ことを示しています。
具体的には、①結婚率の低下が想定以上のペースで進んでいること、②結婚した夫婦が持つ子ども数の減少が想定外だったこと、③コロナ禍という外部ショックが中長期的影響を残したこと──この3点が、推計の前提を覆したと考えられます。政府は2026年度以降、将来推計の前提値を大幅に見直す必要に迫られています。
少子化を加速させる3つの根本要因
少子化の原因は複合的ですが、データから浮かび上がる根本要因は3つに集約されます。
要因① 未婚化 ─ 50歳時未婚率が30%に迫る
総務省「国勢調査」によると、2020年時点の50歳時未婚率(生涯未婚率)は 男性28.25%、女性17.81%。1980年には男性2.60%、女性4.45%だったことを考えれば、40年で男性は約11倍、女性は約4倍に膨れ上がった計算です。
社人研の推計では、2050年には男性の生涯未婚率は3割を超え、女性も2割を超える水準になるとされています。「男性の3人に1人は結婚経験がない社会」が、もう目前に迫っているのです。
さらに深刻なのは、高齢未婚者の急増です。同研究所の推計によれば、65歳以上の未婚者は、2020年の男性124万人・女性99万人から、2050年には男性380万人・女性317万人へと約3倍に増加する見込みです。これは社会的孤立、介護、相続など多方面に影響を及ぼす問題であり、少子化と孤独・孤立の問題は表裏一体であることを示しています。
要因② 有配偶出生率の低下 ─ 夫婦の子どもが減っている
2015年までは、結婚した夫婦が持つ子どもの数は比較的安定していました。「結婚さえすれば2人前後の子どもを持つ」という前提が成り立っていたのです。しかし2015年以降、特に若い世代ほど有配偶出生率が低下しており、この傾向が近年の出生数減少の主因となっています。
日本総研の分析によれば、有配偶出生率の低下は「多子世帯の減少」よりも、「子どものいない夫婦の増加」の影響が大きいとされています。つまり、結婚しても子どもを持たない、あるいは持てない夫婦が増えているのです。
背景には複数の要因があります。晩婚化によって出産可能期間が短くなっていること、不妊治療を必要とするカップルが増えていること、共働きが一般化するなかで仕事と子育ての両立に不安を抱える夫婦が多いこと、そして教育費の高騰により「経済的に子どもは1人が限界」と感じる家庭が増えていること。これらが重なり、「結婚=2人以上の子ども」という前提が崩れています。
要因③ 若年人口そのものの減少 ─ 分母が縮む
たとえ結婚率や出生率が現状維持できたとしても、結婚適齢期の若者の数そのものが減っていけば、出生数は減り続けます。現在、結婚が集中する20代後半〜30代前半の世代は、1990年代に年間120万人程度生まれた世代です。しかしその次の世代(2000年以降生まれ)は毎年100万人前後、さらに下の世代は80万人台と、階段状に減少しています。
ここで見落とされがちなのが、1990年代前半の出生数減少のインパクトです。1975年に人口置換水準を下回って以降、日本は半世紀にわたり「次世代の母親の数」が減り続けています。つまり、現在の出生数減少は 50年前からの積み重ね であり、短期的な政策で反転させることは極めて難しいのです。「第三次ベビーブームが起きなかった」という1990年代の事実が、2020年代以降のボディブローとして効き続けています。
出生数は【若年人口】×【有配偶率】×【有配偶出生率】の掛け算で決まります。日本ではこの3つの変数すべてが同時に低下しているため、加速度的な出生数減少が起きているのです。3つの要素が同時に5%ずつ低下すれば、出生数は約14%減る計算になります。
裏を返せば、どれか1つでも改善できれば、減少幅を大きく抑えることができる、ということでもあります。なかでも最も政策的にアプローチしやすいのが「有配偶率」、すなわち結婚する人の割合です。なぜなら、結婚意欲を持つ若者は8割近くに達しており、彼らが実際に結婚できれば、自動的に出生数も押し上げられるからです。
フォリパートナー総研では、結婚支援こそが少子化対策の「費用対効果の最も高い領域」だと考えています。子育て支援には巨額の継続予算が必要ですが、結婚支援は一度成婚すれば、その後の出生・子育ての連鎖を生み出す起点となるからです。
若年人口がさらに半減に向かう
こども家庭庁長官官房が公表した資料では、ある重要な警告が繰り返し使われています。それが 「2030年代に入ると、若年人口は現在の倍速で急減する」 という指摘です。
理由はシンプルです。2030年代に結婚適齢期を迎えるのは、出生数が急減した2010年代以降に生まれた世代。彼らが15〜34歳の年齢層を構成するとき、若年人口は急激に縮小するのです。
| 西暦 | 出生数(当時) | その世代が25歳になる年 | その年の結婚適齢人口への影響 |
|---|---|---|---|
| 1975年 | 190万人 | 2000年 | 大きな結婚ボリュームゾーン |
| 2000年 | 119万人 | 2025年 | 現在の結婚世代(減少幅は緩やか) |
| 2015年 | 100万人 | 2040年 | 結婚世代が急減フェーズへ |
| 2024年 | 68.6万人 | 2049年 | 結婚世代が1975年の約3分の1に |
こども家庭庁は「2030年代に入るまでのこれからの6〜7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と明言しています。2030年代に若年人口の急減が始まれば、そこから出生数を回復させるのは構造的にほぼ不可能になります。
2026年の「丙午(ひのえうま)」問題
来年2026年は、60年に一度の「丙午(ひのえうま)」の年にあたります。前回の丙午にあたる1966年には、「丙午生まれの女性は気性が激しく、夫を早死にさせる」という迷信の影響で、出生数が前年比25%減少しました。2026年にも同様の影響が起きるのでしょうか。
現代において同規模の急減が起きる可能性は低いと見られています。理由は2つあります。第一に、すでに出生数自体が極端に少なく、「産み控え」をする層が限定的であること。第二に、迷信に左右されない若い世代が子育て世代の中心となっており、丙午を意識する夫婦が減っていることです。とはいえ、丙午を避けるために2025年末までに出産を済ませようとする「駆け込み出産」や、2026年の「産み控え」が数%単位で発生する可能性は否定できません。いずれにせよ、2026年の出生数が60万人台中盤まで下落する可能性は高いと見られています。
2027年以降は丙午の反動で一時的に出生数が増える可能性もありますが、それは統計上の微調整に過ぎず、中長期のトレンドを変えるものではありません。注目すべきは、2027年以降の出生数がたとえ回復しても、「2026年を境に出生数が年間60万人台で恒常化する」という新たなステージに日本が入るということです。これは、社会保障制度と将来の労働力供給にとって、計画そのものの見直しを迫る水準です。
◆ ラストチャンスの意味
2025〜2030年の5年間 に、若者の結婚・出産を取り巻く環境を劇的に改善できるかどうか。ここで反転できなければ、日本の人口動態は「取り返しのつかない局面」に入ります。
この期間は、結婚適齢期の若者が相対的にまだ多い「最後の窓」でもあります。逆に言えば、この時期に何もしなければ、その後の若年人口の急減により、いかなる政策も効果を発揮しにくくなるのです。
総人口8,700万人・高齢化率39%の世界
社人研「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位・死亡中位シナリオによれば、日本の将来像は以下のとおりです。
2070年時点の「同時進行」する現実
同推計が描くのは、以下のような日本社会です。
| 指標 | 2020年(実績) | 2070年(推計) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 総人口 | 1億2,615万人 | 8,700万人 | ▲31% |
| 65歳以上人口 | 3,603万人 | 3,367万人 | ▲6.5% |
| 65歳以上比率(高齢化率) | 28.6% | 39.0% | +10.4pt |
| 85歳以上人口 | 610万人 | 約1,060万人 | +74% |
| 95歳以上人口 | 58万人 | 274万人 | 約5倍 |
| 平均寿命(男性) | 81.58年 | 85.89年 | +4.3年 |
| 平均寿命(女性) | 87.72年 | 91.94年 | +4.2年 |
2070年の日本は、人口規模でいえば1953年(昭和28年)の水準に戻る計算です。しかし年齢構成は全く異なります。85歳以上が1,000万人を超え、95歳以上が現在の約5倍に増える「世界史上例のない超長寿社会」でもあるのです。
現実はこの推計より悪化する可能性が高い
ただし、上記の推計は2024年時点の合計特殊出生率が 1.33 という前提で計算されています。実際の2024年の合計特殊出生率は 1.15。前提からすでに大幅に下振れています。したがって、実際の2070年の姿は、この公式推計よりもさらに厳しいものになる可能性が濃厚です。
国際比較で見る日本の位置
少子化は日本固有の現象ではありません。OECD諸国の多くで合計特殊出生率の低下が進んでいます。主要国の直近値は、韓国0.75(2024年、9年ぶりに上昇)、日本1.15(2024年)、イタリア約1.2、スペイン約1.2、ドイツ約1.4、フランス約1.6、米国約1.6、英国約1.4、シンガポール約1.0などとなっています。
韓国の0.75という数字は依然として世界最低水準ですが、2024年は9年ぶりに上昇に転じました。婚姻数の増加と政府の少子化対策が一定の効果を見せたとされます。一方で、フランスや北欧諸国が比較的高い出生率を維持しているのは、「結婚しなくても子どもを持つ」という選択が社会的に受け入れられており、婚外子の比率が5〜6割に達する国もあるためです。一方で日本の婚外子比率は2%前後と極端に低く、「結婚=出産の前提条件」という日本特有の構造 が少子化対策の難しさを生んでいます。
この構造自体の是非はさておき、現実として日本では「結婚しなければ子どもは生まれない」という前提が動かないのであれば、婚姻数の回復こそが出生数回復の最優先課題 であると言えます。2024年から2年連続で婚姻数が増加していることは、小さな希望の芽と言えるでしょう。
総人口が8,700万人となる2070年、生産年齢人口(15〜64歳)は約4,535万人に減少すると推計されています。2020年の7,509万人と比べて約4割減。働き手が4割減り、高齢者を支える構図そのものが成立しなくなります。
年金制度、医療保険、介護保険、そして地方自治体の存続──これらすべてが根本から再設計を迫られます。2025年11月に政府が立ち上げた「人口戦略本部」は、「子どもを増やす政策」から「減る人口で社会を維持する政策」への転換を模索しているとされますが、これは明るい決断ではなく、現実への適応です。
現役世代1人が支える高齢者の数は、2020年時点の約2.0人から、2070年には約1.3人へと変化します。つまり、若い世代1人が高齢者をほぼ1人背負う時代に入るのです。消費税や社会保険料のさらなる引き上げ、給付水準の抜本的見直し、そして外国人労働力の受け入れ拡大──これらを組み合わせても、制度の持続性を確保するには相当の痛みを伴う改革が必要となります。
年3.6兆円投入でも止まらない理由
政府は2023年12月、「こども未来戦略」を閣議決定し、総額 年3.6兆円規模 の「こども・子育て支援加速化プラン」を推進しています。2025年度のこども家庭庁予算は7.3兆円(前年度比+17.8%)と、過去最大規模に。2026年4月からは「子ども・子育て支援金制度」も本格スタートしました。
しかし出生数の下げ止まりには至っていません。なぜでしょうか。
限界① 支援の対象が「すでに結婚した人」中心
現在の少子化対策の多くは、児童手当の拡充、保育所の整備、育児休業の拡充など、「すでに子どもを持っている家庭・妊娠している家庭」向けのものです。もちろんこれらは重要ですが、少子化の主因である 「結婚していない若者」 に対する支援は限定的です。
結婚支援にかかる国の予算は、こども家庭庁予算7.3兆円のうち、ほんの数十億円規模にとどまっています。これは全体の0.01%以下の水準です。自治体レベルでは結婚支援事業に取り組むケースも増えていますが、予算規模や実効性の面で課題が多く、全国的にはまだ「結婚支援は行政の主要業務ではない」という認識が根強く残っています。
限界② 若い世代の所得・雇用が向上していない
結婚や出産を阻む最大の要因は、経済的な不安です。日本総合研究所の翁百合氏の調査によれば、OECD諸国の平均と比較して、日本の低所得層の子育て世帯は税や社会保険料の負担率が高く、家族手当の支給も薄い傾向にあります。
実質賃金の長期停滞、非正規雇用の拡大、教育費の重さ──こうした構造的な問題を解決しないまま、ピンポイントの子育て支援を積み増しても、根本的な流れは変わりません。特に若い世代の男性で非正規雇用が多い現状は、婚姻率の低下と直結しています。総務省の労働力調査によれば、年収300万円未満の25〜34歳男性の有配偶率は、年収400万円以上の男性の半分以下にとどまるというデータもあり、「非正規雇用の若者が結婚から排除される」 構造が浮き彫りになっています。
限界③ 東京一極集中による「出生率の自然減」
東京都の合計特殊出生率は、2024年時点で 0.96(8年連続の低下、全国で唯一の1.0未満) という異常事態にあります(東京都「人口動態統計年報」2025年11月公表)。若者が地方から東京に流入するほど、全国平均の出生率は押し下げられる構造があるのです。東京一極集中が続く限り、全国の合計特殊出生率の回復は難しいと言えます。
限界④ 財源のあり方そのものへの不信
2026年4月からスタートした「子ども・子育て支援金制度」は、すべての公的医療保険の被保険者から支援金を徴収する仕組み。子どものいない独身者や子育てを終えた世代からも徴収することから、一部では「独身税」と批判され、制度への信頼を損なう一因にもなっています。
制度の是非はともかく、若者の実質的な手取りが増えなければ、結婚や子育ての経済的ハードルは下がりません。「社会保険料の値上がりで若者の可処分所得が減る」→「結婚や子育てが遠のく」→「さらに少子化が進み社会保障の基盤が細る」という悪循環が懸念されます。
限界⑤ 短期的な「ばらまき」では意識は変わらない
児童手当の拡充は重要ですが、「毎月数万円の手当があれば子どもを産もう」と決断する家庭は少数派です。子どもを持つかどうかの判断は、将来20年にわたる教育費、住宅費、キャリア継続の見通しなど、ライフプラン全体を俯瞰した判断 に基づきます。短期的な給付では、この中長期的な不安を払拭するには不十分です。
OECD諸国のデータを見ると、少子化対策で一定の成果を上げているフランスやスウェーデンは、「給付の厚さ」だけでなく、「仕事と子育ての両立のしやすさ」「住居費の低さ」「教育の公共性」 といった社会インフラ全体を整備していることが特徴です。日本は給付の拡大には熱心でも、働き方改革や住宅政策、教育無償化などの構造的改革は後手に回っています。
現在の少子化対策の予算構成を見ると、結婚前の若者(未婚者)に対する直接的な支援は、全体のごく一部にすぎません。財務省財政制度等審議会も2025年11月、「EBPM(証拠に基づく政策立案)の取組を強化し、より効果の高い政策に重点化していくことが求められる」と提言しています。
婚活の現場にいる私たちから見ても、「結婚したいが出会いがない」「経済的に一歩踏み出せない」という若者は非常に多い。ここに手を差し伸べる仕組みがなければ、いくら子育て支援を厚くしても、そもそも夫婦が成立しないのです。
「結婚という選択」から未来を変える
ここまでの分析をまとめると、日本の少子化の将来像は次のとおりです。
◆ 日本の少子化:今後10〜50年のシナリオ
〜2030年:出生数は60万人台前半まで低下。婚姻数の下げ止まり効果が限定的に働くものの、有配偶出生率の低下で相殺される。合計特殊出生率は1.10前後で推移。
2030年代:若年人口の急減期に突入。出生数は50万人台へ。少子化の自動加速メカニズムが本格稼働する。
2040〜2050年:出生数は40万人台。男性の生涯未婚率は3割超。人口1億人割れ(2056年頃)が目前に。
2070年:総人口8,700万人(公式推計)。ただし現在の低出生率が続けばこれより大幅に下振れ。65歳以上が人口の約4割を占める社会。
それでも希望はある ─ 結婚支援の3つの意義
暗い数字ばかりを並べましたが、私たちは婚活業界で17年以上活動してきた立場から、希望がまだ残されていると考えています。それは、「結婚したい」と思っている若者が依然として多数派 だからです。
社人研「出生動向基本調査」によれば、18〜34歳の未婚男女のうち「いずれ結婚するつもり」と答える割合は男女とも約8割。この希望を現実に変える仕組みがあれば、少子化の流れは変わり得ます。
結婚相談所が果たすべき3つの役割
① 出会いのミスマッチを解消する
自治体や地方では「結婚したい男性」と「結婚したい女性」が出会えない、出会っても条件が合わないという構造的ミスマッチが起きています。結婚相談所は、このマッチングを効率化する社会インフラとしての役割を担っています。IBJ成婚白書(2025年)によれば、成婚者の平均お見合い回数は11回、交際から成婚までは約4ヶ月。適切なサポートがあれば、半年以内に結婚を決める人が多数派なのです。
自然な出会いに頼っていると、20代後半から30代にかけて職場や友人関係の中で新たな異性と出会う機会は急速に減少します。結婚相談所は、この「出会いの絶対量の不足」を補う仕組みとして、特に30代以降の婚活において極めて有効です。IBJ加盟の結婚相談所では、全国約10万人の会員データベース(2025年時点)から条件に合う相手を検索・紹介できるため、自然な出会いの何倍ものスピードでマッチングが進みます。
② 結婚に対する認識を現実に合わせる
「結婚はいつでもできる」「いい人がいれば結婚する」という若者の意識と、実際の婚姻市場のデータには大きなギャップがあります。IBJのデータでは、女性は35歳以降、男性は40歳以降、成婚率が大きく低下します。正しい情報に基づいて、若いうちから行動を起こせる環境を作ることが重要です。
また、IBJの成婚白書によれば、年収の高い男性ほど成婚率が高い傾向がある一方で、年齢が上がるとその優位性は頭打ちになるというデータもあります。年収800〜900万円の男性で見ると、30〜34歳と40〜44歳を比較した場合、40〜44歳の成婚率は12ポイント低くなります。つまり、年収だけでなく「年齢」という動かせない条件が成婚に大きな影響を与える のです。この現実を若いうちに知ることが、行動の起点になります。
③ 結婚を社会全体で祝福・支援する文化の再構築
かつて日本には、職場の上司や地域の「お見合いおばさん」が若者の結婚を支援する文化がありました。現代ではハラスメントへの配慮などからこうした機能が失われましたが、代わりに 結婚相談所という専門機関 がその役割を担える時代になっています。
個人にできること、社会にできること
本レポートで見てきたように、少子化は政府・企業・地域・家庭・個人、すべての層に関わる複合的な課題です。ただし、「国が何とかしてくれる」と待つのではなく、一人ひとりが自分のライフプランと向き合い、行動を起こす ことが重要です。
結婚や子育てを考えている方は、「いつかいい人に出会える」と受け身で待つのではなく、出会いの機会を自ら作り出す行動を。企業の経営者や人事担当者は、若手社員の結婚・出産を応援する職場環境づくりを。自治体は、地域の結婚支援事業を強化し、若者が地元で暮らしながら結婚・出産できる基盤整備を。そして私たち結婚相談所業界は、質の高いマッチング支援と、婚活に関する正確な情報発信を通じて、若者の希望を現実に変える役割を果たしていく必要があります。
30代・40代からでも間に合う「今からの行動」
「もう30代後半だから遅いのでは」「40代からでは結婚相談所でも難しいのでは」と諦めている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、IBJの統計データでは、30代後半・40代の成婚事例も少なくありません。重要なのは、年齢を理由に立ち止まるのではなく、今の自分に合った戦略と行動 を選択することです。
30代・40代の婚活では、若い世代とは異なる魅力──社会人としての落ち着き、経済的安定、人生経験の豊かさ──が評価されます。また、同世代や年上の異性を視野に入れることで、成婚の可能性は大きく広がります。大切なのは、自分の状況を正確に把握し、戦略的に動くこと です。
少子化の未来は「社会の合計」が決める
日本の少子化は、一人の政治家、一つの政策、一つの制度で解決できる問題ではありません。何百万人もの若者が「結婚したい」「子どもが欲しい」と思ったとき、その希望を実現できる社会であるかどうか。その「合計」が、日本の未来を決めます。
フォリパートナー総研は、婚活の最前線で蓄積されたデータと知見をもとに、今後も少子化の構造分析と、個人の希望実現を支援する発信を続けてまいります。日本の少子化問題は深刻ですが、それは同時に、一人ひとりの人生の選択が社会の未来を形作る ことの証でもあります。ご自身の人生に向き合い、一歩を踏み出す方を、私たちは全力でサポートします。
まとめ ─ 希望は「行動する個人」の総和として生まれる
本レポートで概観したように、日本の少子化は短期的には止まりません。2030年までに合計特殊出生率が反転上昇する可能性は極めて低く、2070年時点で人口が8,700万人を下回ることはほぼ確実です。これは、受け入れるしかない現実です。
しかし、少子化の「加速度」を緩めることは可能です。年間出生数が60万人で下げ止まるのか、それとも40万人まで落ち込むのか──そこには大きな差があり、その差を生むのは一人ひとりの結婚・出産に関する選択の集積です。
結婚したいと願う若者が、実際に結婚できる社会。結婚した夫婦が、希望する数の子どもを持てる社会。その実現のために、私たちフォリパートナー総研は、データに基づく情報発信と、現場での丁寧な結婚支援を、これからも続けてまいります。日本の少子化問題は、遠い未来の話ではなく、今この瞬間の選択の積み重ねによって形作られていく現実なのです。
最後に強調しておきたいのは、少子化の進行を「個人の選択の問題」として片付けてはならないということです。結婚しない自由、子どもを持たない自由は当然尊重されるべきですが、同時に 「結婚したいのにできない」「子どもが欲しいのに持てない」 という若者が多数存在する現状を放置することは、社会の責任放棄に他なりません。結婚を望む人には結婚の道筋を、子どもを望む夫婦には出産・子育ての支援を──この当たり前の前提を整えることから、日本の少子化対策は始めるべきだと、私たちは考えています。
少子化は統計上の現象ですが、その背後にあるのは、「結婚したい」「子どもが欲しい」と願う一人ひとりの若者が、経済的・社会的・心理的な壁に阻まれて希望を叶えられない現実です。
日本の少子化問題の今後を変える鍵は、巨額の予算投入よりも、「若者の結婚・出産の希望を叶える環境を整えること」にあります。これは国・自治体・企業・結婚相談所、そして社会全体が共有すべき課題です。
フォリパートナーは、20年以上の婚活支援の経験を通じて、一人でも多くの方が自らの希望を実現できるよう、真摯にサポートを続けてまいります。少子化という大きな流れの中で、個人の幸せを一つずつ積み上げていくこと──それが私たちの使命だと考えています。
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無料相談を予約する ≫- 厚生労働省「人口動態統計速報(令和7年(2025)12月分)」2026年2月26日公表
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」2025年9月16日公表
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(概数)」2025年6月4日公表
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」2023年4月公表
- 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2025」
- 総務省統計局「令和2年国勢調査」2020年
- 東京都「2024年(令和6年)東京都人口動態統計年報(確定数)」2025年11月11日公表
- こども家庭庁「こども未来戦略」2023年12月22日閣議決定
- こども家庭庁「令和7年度こども家庭庁予算案のポイント」2025年
- 日本総合研究所 藤波匠「婚姻数の増加の要因と今後の展望」2026年3月24日
- 日本総合研究所 藤波匠「2025年の出生数は66.5万人、婚姻数は48.5万組の見通し」2025年12月4日
- 日本総合研究所 藤波匠「2024年の合計特殊出生率は1.15、過去最低を大幅更新」2025年5月15日
- 財務省財政制度等審議会「社会保障(少子化対策・子育て支援)」2025年11月11日
- ニッセイ基礎研究所 金明中「なぜ韓国の出生率は9年ぶりに上昇したのか」2025年2月27日
- ジェトロ「韓国、2024年の合計特殊出生率は0.75、9年ぶりに上昇」2025年3月
- 株式会社IBJ「2025年 IBJ 成婚白書」2026年4月9日公表
- 株式会社IBJ「成婚白書2024年度版」2025年4月公表




これまでの少子化は、主に「未婚化」「晩婚化」によるものでした。しかし2015年以降は、結婚した夫婦が持つ子どもの数の減少(有配偶出生率の低下)が主要因に変わっています。つまり、結婚を応援するだけでは出生率は回復しないフェーズに入ったのです。
ただし誤解してはならないのは、「結婚応援が無意味」ではないということ。結婚なくして出生なし、という日本の社会構造は変わっていません。婚姻数が下げ止まれば出生数の下支え効果は2026年以降に顕在化する、と日本総研は分析しています。